フランス・ハルス (オランダ 1580〜1666) 「聖ゲオルギウス市民隊の幹部たちの宴会」1616年 油彩 カンヴァス 175x324cm フランス・ハルス美術館
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プロテスタントによる新生国家オランダでは、宗教画がすたれたかわりに、裕福な市民たちが肖像画を求めるようになった。その肖像画の第一人者として活躍したのが、ハールレムの画家ハルスだ。
アントウェルペンに生まれ、西部のハールレムで画家として出発した。
ハルスの作品を特徴づけるのは、まず、肖像画を風俗画のように描いたこと。彼はモデルに豊かな表情と動きを与え、身近なドラマに仕立てあげたのだ。
もうひとつの特色は、タッチ(筆触)を残した軽快で大胆な筆さばきである。この軽快なタッチは年とともにますます自由闊達になり、19世紀のマネや印象派を予感させる。
肖像画のなかでもハルスが得意としたのは、市民隊や各種団体の役人を描いた集団肖像画だ。これは宗教画にかわるオランダならではの公共的な大作で、画家にとっては実入りがいいうえ名誉ある注文仕事だった。

本作の聖ゲオルギウス市民隊とは、16世紀の混乱期に市民たちが結成した自警団のひとつ。17世紀には社交クラブと化して、年1回このように盛大な宴会を開くようになった。
ハルスはハールレムで、こうした集団肖像画の注文をほとんど独占していく。それは、彼以前の集団肖像画無表情な顔をただ横に並べただけの「記念写真」にすぎなかったのに対し、ハルスは全身のくつろいだポーズといきいきとした表情で活写し、いわば「スナップ写真」に変えたからだ。

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