作品名:赤いチョッキの少年 製作年:1890年 サイズ:92x73cm 技法 :油彩 キャンバス 所蔵 :個人蔵(ポール・メロン夫妻) |
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![]() 少年の相貌は,そこはかとないけれども,繊細に描かれる。われわれは,彼の内気と悩める内的生命に気づかずにはおれない。うすく引かれた唇は,遠くの空を飛ぶ鳥の翼のようである。 この感情の渋い調子は、実にセザンヌにとっては重要である。対照的に,この絵は,われわれが盛期ルネッサンスの巨匠たちのうちに貴著する形態のあの高貴な大きさと,そしてセザンヌ独自の,生動する筆づかいによって実現された色彩のすばらしい響きと生命感によって,生き生きとし,力強いのである。これは明瞭に配置され,形式化された構図であり,そこにおいては,少年のしなやかな身体の,それ自体で均衡のとれた構成が,その反面で,変化交替する対照性のうちに,カーテンと椅子の長いリズミカルな形態に対して,対立している。 左では直線のカーテンは,右では曲線である。少年の身体は,左でいっそう曲折し曲線を描くに対して,右では硬直している。このきわめて想像的な構図は,きわめて慎重に考え抜かれ,直接的な印象にほとんど負うところがない。しかし色彩と輪郭線の細部はそれらの無限の変化のうちに,視覚世界に対して見開いた,探究的で感覚的な目を,如実に示している。 印象派と呼ばれる人たち「セザンヌ」。 |
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