ヤン・ファン・エイク(ベルギー 1390頃〜1441) 「アルノルフィーニ夫妻の肖像」 1434年 油彩 板 81.8x59.7cm ロンドン ナショナル・ギャラリー

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高さ80センチあまりのさほど大きくない画面に、超人的な緻密さで、手をつなぐ男女と室内風景が措かれている。これはベルギー北西部ブリュージュ(ブルッヘ)に住むイタリア商人ジョヴァンニ・アルノルフィーニと妻との結婚記念図とされている。
このころのネーデルラント絵画では、手前にあるものも遠くにあるものも同じようにくっきりと措かれる。微細に描かれた室内の事物には、犬は夫への貞節を、脱ぎ捨てられたサンダルは神聖な場所を、昼なのに灯っているろうそくはキリストを象徴する、というような意味が隠されている。奥の壁には流麗なカリグラフィーで「ヤン・フアン・エイクがここにいた、1434年」と書かれている。その下の凸面鏡の円形の縁飾りにまでキリストの生涯が描かれ、鏡面には手前の男女の後ろ姿と、さらに人の人物が映っているが、それはヤン自身ともうひとりの結婚立会人だと考えられている。
鏡に画家の姿を描き込むというアイディアは、17世紀スペインのベラスケスに影響を与えた。
ヤン・フアン・エイクは15世紀ネーデルラント絵画を代表する画家。当時のフランドル地方ではブルゴーニュ公国が栄えていたが、ヤンは1425年から公国君主フィリップ善良公の画家兼侍従となり、32年からは宮廷のあったブリュージュに暮らした。亡くなった兄フーベルトの仕事を継いで、『ヘントの祭壇画』、1432年 へント〈ベルデー〉、聖バーフ大聖堂)を完成。
官僚や市民からの注文も手がけた。
1441年に没するまで、油彩技法の改良や、絵画形式におけるさまざまな革新を果たした。たとえば当時はまだ未成熟なジャンルだった肖像画では、細密描写によってモデルの人間性まで描き出した。古典や幾何学にも精通していたというヤンをフィリップ公は重用したが、残念ながらヤンがブルゴーニュ宮廷のために描いた作品は1点も現存していない。

  


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